令和3年度 学校経営について

令和3年度 川西町立吉島小学校教育実践基本計画(案)

 

はじめに

◯ 歴史・伝統・誇り・愛

本校は今年度創立124周年を迎える歴史と伝統のある、地域に根ざした学校である。これまで各界で活躍する約4,800名の卒業生を送り出し、地域の方々が誇りを持つ、愛される学校である。

◯ CS・おらだの学校

平成27年からはCS(コミュニティスクール)として、学校を取り巻く様々な課題等に対し、学校のみの視点ではなく、地域の各方面で中心となりリードしている方々や、子どもを実際、登校させている保護者の方々等、全方向から知恵を出し合い、吉島地区の学校として、よりよい学校を目指し、運営してきている。まさしく吉島地区の「おらだの学校」になっている。

◯ 地域との連携

令和2年度から本格実施となった新学習指導要領の柱の一つに「社会に開かれた教育課程」の編成がある。本校では、学校と地域の結びつきを促す地域学校協働本部の地域コーディネーターを中心に、令和元年度は延べ258名、令和2年度はコロナ禍の中、138名の方々から授業等の学習活動や学校内外の環境整備において協力いただいている。

また、本校児童の約8割が通う児童クラブ「きらり」とも、常に情報交換を行い、風通しの良い関係を築いている。子ども一人一人の情報等を共有することにより、健全育成に関することはもちろん、悪天候のための下校の仕方や新型コロナウイルス感染症への対応等における、生命の安全・安心な部分についても、足並みを揃えた速やかな対応が行われている。

◯ 家庭の状況

家庭においては三世代同居の家族が多く、登下校の送迎等のために来校される祖父母がみられる。子育てに祖父母の協力する姿がある。また、農村地帯であることから専業・兼業農家が少なくない。子どもたちのおおらかさや人懐っこい性格は、学校周辺が田園に囲まれ、四季の移ろいを感じることができることばかりではなく、このような家庭環境も影響しているものと強く感じる。  

◯ 学校を取り巻く状況と課題

現在の学校を取り巻く社会の状況は、昨年度末からの「新型コロナウイルス感染症による感染拡大」によって、より急激に変化した。

学校の中は、マスク着用や換気の徹底、手指消毒、しゃべらない給食等々の感染予防対策が当たり前であり、各行事の運営や授業スタイルにおいてもグループ学習等は控え、マスクをつけ小さな声で歌うことや握手やハイタッチなどはもちろん許されないものになっている。

このような中、「子どもの学びを止めない」ということで国の政策が前倒しされ「GIGAスクール構想」により、令和3年度中には1人1台端末環境となる見込みである。これにより、紙媒体の教科書が電子教科書に進み、これまでの学習スタイルが変革していくこととなる。家庭でのネット環境の格差、ネットモラル等の指導等、学校が担う範囲が更に広がっていく状況となる。

国際社会を見ても、「新型コロナ」のワクチンに関わる問題や、暴力的な行動等がおきる政権交代、経済の実態に合わない株価等々、不安定な状況は数えれば切りがない。これまでも、「5G」や「AI」の登場で、ある教授がこれから無くなっていく職業を示したことがあったが、「新型コロナ」により今、瀕死状態の業種が出てきている。

しかしながら、その反面、業績を急激に伸ばしている業種が出ていることや、アウトドア等を楽しむ生活スタイル、仕事の拠点を地方に移転する企業や個人等々もあることから、一年後も見通せない、予測不可能な時代であるとともに、これまでの人間の持っている価値観が変わる、また多様になっていく混迷な時代であると感じる。

◯ SDGs(持続可能な開発目標) 「誰1人取り残さない」きらりよしじまネットワーク

令和3年元旦の山形新聞第一面には「幸せの羅針盤」として吉島地区を運営している「NPO法人きらりよしじまネットワーク」が取り組む、「誰1人取り残さない」持続可能なまちづくりの例が掲載された。山形県の主要紙の元旦の第一面を大きく飾っていたのが、この吉島の住民自治の姿であったのだ。これを踏まえ、今年度からの学校経営の視点に、吉島地区が掲げる「誰1人取り残さない」という精神と、原点であるSDGsの取り組みを意識した実践を、本校の経営の中に取り込み進めていく。

 

◯ 次代を生き抜くために“必要な力”

吉島小の子どもたちには、上で述べたような様々な問題、そして、これまでの価値観にとらわれない、多様で新しい予測不可能な次代を生き抜き、さらには国際社会の中で、その問題解決のために働ける人間として“必要な力”の礎を築く教育を進めていきたい。

 

◯ その“必要な力”を、令和2年度に設定した次の3つに集約、設定し、計画を策定する。

〇 豊かな人間性 

〇 コミュニケーション力 

〇 問題解決力 

以上のことを踏まえ、令和3年度はさらに「初めてのことに挑戦、体験、経験」するとともに、「人とのかかわり」から学ぶ教育が展開される学校となる一年としたい。子どもたちが冒険心を持ち、自らが、自らの意思で動き、考え、主体的に学ぶ探究の年としていきたい。

 

1 本校の存在理由・使命(ミッション)

吉島から日本国内及び地球規模で抱えている問題を解決できる人間を育成するための、礎を築く。 (「永久に栄えゆく」活力ある吉島地区の担い手として、優しさと強さをもった、賢い人間を育成する)

 

2 本校の教育目標(ビジョン)

    吉島を愛し、次代を担う“明るく・賢く・逞しい”子どもの育成

  (吉島を愛し、次代を担う“あかるく・かしこく・たくましい”子どもの育成)

 

3 目指す子どもたちの姿(ビジョン)

    

吉島愛(よしじまあい)

     よ よく食べ、よく遊び、よく寝る子どもたち

     し 失敗を恐れず挑戦する子どもたち

     じ 自分から動き、考える子どもたち

     ま 学ぶことを楽しむ子どもたち

     あ あったかく、思いやりのある子どもたち

     い いつも笑顔で気持ちのよいあいさつをする子どもたち

 

4 目指す教職員の指導する姿(バリュー・価値判断)

・子どもたちの良さを認め、ほめて伸ばす        【自尊感情を高める】

・学びたくなる、やりたくなる仕掛けを仕組む   【おもしろい授業をつくる】

・初めての体験、経験をつくる        【クリエイティブな脳をつくる】

・挑戦したことを評価する(取り組みの過程を評価) 【チャレンジ精神を育てる】   

 

5 今年度の指導の重点

   ○ 一人一人の「やる気スイッチ」を探し、押し続ける!

       ~本気で取り組む、真剣な目、額の汗、元気な声~

※すべての実践の中核に、この重点のエキスが組み込まれている。

 

6 特に重点を踏まえた取り組みとして(案)

   ○日々の生活では

    ・わかる授業 理解することから定着へ         (わかる→面白い→自ら学ぶ→面白い)

    ・教え合い・学び合いの学習   (教えることにより定着→仲間の良さ→自分もなりたい)

    ・課題解決型・探究型の学習                 (内発的な知的好奇心を最大限引き出す)

    ・初めての体験・経験する学習      (発達段階を大切にした体験で脳を刺激する)

   

○行事では

    ・子どもたちが作り上げる吉島大運動会           (みんなで考え、提案、採決する)

    ・運動が苦手な子どもが楽しめる大会・競技             (活躍の場、認められる場)

    ・創立を祝う学習発表会                       (みんなで祝う吉島小の日)

    ・自分の記録に挑戦、水泳記録会・中長距離走大会             (成長を実感する)

   

○その他

    ・様々な「人」から学ぶ場を設定 → 地域の先生(地域ボランティア)

                      各分野で活躍している方々 等

    ・総合学習「吉島学」 → 吉島を学ぶ・吉島から学ぶ

                 SDGsの視点から

    ・英語活用の場面設定

    ・人として魅力ある教師集団                      (人は好きな人からしか学ばない)

 

 

7 他機関等との連携

○家庭との連携

・家庭学習の充実

継続は力なりであり、家庭学習は授業等で学んだことを定着させ、さらに発展するためには欠かせないもの。中学校との連携を図り、学習充実期間の意識付けもちろんのこと、日ごろからの習慣化を図る。

     ⇒ 「(仮)キラリ学び推進委員会」の立ち上げ

「吉島小で学べば賢くなる」「吉島地区に住めば賢くなる」を実現するために、学校運営協議会の特別委員会として、令和3年度に立ち上げ、このグランドデザインを進める令和4年度まで検討を重ね、具体的に取り組み、成果を出したい。各所からの情報交換と協議を重ね、有効であると思われる取り組み進める。また、PDCAサイクルの仕組みを考えていく。さらに、学校、家庭、地域、その他外部からの目線で指導いただける方を委員として招聘し、実のある委員会にする。

・携帯端末の安全な有効活用を推進

今年度中に一人一台端末環境になるが、現在、子どもがSNS等に関連した犯罪に巻き込まれるという事件が後を絶たない状況である。各家庭での携帯端末の使い方について、話し合いの場を設け、子どもを犯罪から守るという意識と行動を進める。一方で、携帯端末が個別の学習を補完し、誰1人取り残すことのない学びとなる活用を進めていく。

 

○地域との連携

    ・キラリよしじまネットワーク

      SDGsの視点、子どもの健全育成、総合学習「吉島学」等を推進するため、情報の共有と、同一歩調の取り組みを進めていく。わんぱくキッズ等の事業への協力。学力向上のための施策についての協力。

    ・児童クラブきらり

      子どもの情報共有を密に進める。子どもの様々な場面で見せる顔や言動を共有し、より心身ともに健康な子どもたちの育成を進める。また、家庭学習の充実に向けた取り組みも共に進めていく。

    ・よしじまっ子見守り隊、子ども110番 等

      令和2年度はコロナ禍により、互いの交流活動ができない状況が続いた。令和3年度は元の状況にもどれるという保障はないので、新たな交流を模索していく。

    ・地域ボランティア

      地域の人材こそ宝の山。この宝の山を開拓し、様々な地域の方々から学び、多角的、多面的に考えられる思考力、判断力を育成していく。総合学習「吉島学」の核となる方々である。

 

おわりに

◯本計画の考え方

 本計画期間は令和2年度、3年度、4年度の3か年と考えていきたい。長年、本校の課題は「主体性を養うこと」「家庭学習の充実を図ること」であり、これまでも実践を積み重ねてきた。しかしながら、その取り組みの切り口が明確でなかった部分があった。したがって、昨年度から重点を一点に絞り込み、より意識化され、より実効性のある取り組みを模索し実行している。

しかしながら、令和2年度はコロナ禍により当初計画していた教育実践に支障がでてしまい、納得いく取り組みとならなかった。

 本計画の肝は、吉島小の強みである家庭や地域の力を学校運営に取り込めるかである。より強固な関係を結んでいくことが重要である。それは、学校運営協議会を核として、学校の教職員を含め、地域ぐるみで「目指す子どもの姿」の具現化を図る取り組みを推し進めることにより、より「明るく、賢く、逞しい」子どもの姿がいたるところで見られるようになると考えている。

 さらに、「目指す子どもの姿」が、様々な場所で見られることで、子どもたちがほめられ、認められ、自尊感情が高まることで、さらに伸びるエネルギーを蓄えられ、育ちつづけるというプラスの螺旋に乗っていく「人間を育てる場・吉島」になると思っている。

◯持続可能な吉島小学校に

  今年度の吉島小学校は、ベテランの先生がこれまでの教員生活の中で積み重ねてきた教育、指導の考え方や技能のノウハウを、若手に伝授しながら、若手が前面で汗をかき、次代を生き抜く人間を育成していきたい。同僚性を高め、これまでの蓄積された教育の基礎基本を踏まえ、持続可能な新しい教育への取り組みを進めたいと考えている。吉島小SDGsである。

◯どっしりと

  「教育」は、すぐ成果が現れるものではない。その時々の時勢により、大ぶれすること無く「教育」をすすめる。よしじまっ子が次代で活躍するために、今、その可能性の種を蒔くときである。種を蒔かなければ、芽吹かない。芽吹かせ、花を咲かせ、結実させるため、揺るがない大木にしていくために、どっしりと構え取り組む一年とする。吉島の空気である。